自叙伝作品
『かもめが跳んだ日』
著者・発行者 江副浩正
編集・制作 朝日新聞出版サービス
発売 朝日新聞社
協力 河野初江
サポート内容
構成、原稿の添削・推敲、追加執筆補助
協力期間 12か月
頁数 296頁
形式 上製本(自費出版)
価格 1800円
創業者の想いを伝える
30代半ばで河野はリクルートを退職した。辞意を伝えたとき、リクルートの創業者である江副さんは時間を使って丁寧に引き止めてくださった。しみじみありがたかった。この恩は忘れない、会社を辞めても何かあったら呼ばれる人間になろうと思った。
その日は意外に早くやってきた。リクルート事件のさなか、「リクルートへの手紙」を残したい、ということで呼ばれた。取材テープを回した。けれども、どのテープも江副さんの声を拾うことはできなかった。わずかに聞こえるのは何度もただ社員に詫びる言葉だった。
それから10年以上経て、もう一度江副さんから「今度こそ完成させる。手伝って」と声がかかった。江副さんの自伝は、大きく二つに分かれていた。前半は生い立ちからリクルート事件まで。後半は、江副さんが自身の保有株をダイエーに譲渡する顛末である。この後半部分が、まとまらないで残っていた。
江副さんの求めに応じて私は後半の原稿の執筆をサポートした。自伝を作ろうと思い立ってから10年以上もの歳月を経て、2003年江副さんの自伝『かもめが翔んだ日』は完成し、朝日新聞社から出版された。
ダイエーに株を譲渡するということは、リクルートが江副さんのリクルートではなくなることを意味していた。けれども当時、誰も江副さんの心情に思いを寄せる余裕がなかった。社員の多くが、なぜそうしないとリクルートが生き残れないのか理解していなかった。
リクルート株を手放したその日、江副さんは浜離宮庭園に車を走らせ、かもめが群れをなして飛来するのを見つめ、ただひとりリクルートに別れを告げる。タイトルの『かもめが翔んだ日』はここからきている。
その後、私は再び江副さんに声をかけられて、『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論社)の本づくりを手伝った。
『リクルート事件・江副浩正の真実』は、密室での過酷な取り調べと、それをもとに作られる検察官調書に重きを置く司法制度への問題提起の書である。記述に間違いがあってはならない。1989年~1990年の新聞報道を読み込み、記述と照合しながら、江副さんとともに原稿を完成させる作業をした。
『リクルート事件・江副浩正の真実』は2009年、執行猶予が終わるのを待って中央公論新社から刊行された。初公判から20年以上かけて結実した江副さん渾身の作である。
次の世代に、自叙伝を残すことができるリーダーは幸せである。
あとに続く人がいることを、知っているのだから。
リーダーの自叙伝を読むことができる次の世代は幸せである。
先人が汗して得た知恵と体験を手にできるのだから。
臥龍記
『やらにゃあいけんじゃろ』
著者 岡﨑 浩
執筆・編集 河野初江
体裁 四六判・上製
頁数 356頁
価格 2,000円+税
発刊 2018年11月
臥龍記
『やらにゃあいけんじゃろ』
著者 岡﨑 浩
執筆・編集 河野初江
体裁 四六判・上製
頁数 356頁
価格 2,000円+税
発刊 2018年11月
どん底からの企業再建、起死回生の一代記
26歳でいきなり倒産寸前の会社の社長に就任、最先端の技術を持つ優良企業へと導いた経営者の半生記であり、会社再建40年の記録である。
金無し、仕事無し、技術無し、大借金あり。こんな難しいもの誰もようせん。こんなもんができたらわしらは逆立ちしたる。なんでお前のところでできるんじゃ。切羽つまるからできるんじゃ……。やがて、その技術力が高まると、今度は名門企業が白紙見積で対抗。泣く子もだまる国税との対決。最後はサービサーが出てきて……と、国、銀行マン、サービサーとの息詰まる攻防が展開される。
著者である岡﨑浩代表が社長就任40年を期に、海外へと広がった現地の社員そして次世代のリーダーに対し、株式会社イノテックという会社が何を大切にしてきたか、人間オカザキが何を大事に生きてきたかをとことん語りつくした、「小さな会社、ここにあり」の気概が胸を打つ痛快な経営の書。
完成と同時に社員がむさぼるように本書を読み、関係会社や銀行から、社員教育に生かしたいということで問い合わせが殺到。またたくまに初版が尽き、急遽再販に走る事態となった。事業の承継では企業理念の承継がもっとも難しいとされるが、社員、関係者を巻き込んだ創業型リーダーから次世代のリーダーへの事業承継の書としても重要な役割を果たした。