自分史で日本を元気にと活動する河野初江が、東京女子大学エンパワーメントセンター「101のストーリー」で取り上げられ、そのメッセージがホームページに掲載されました。
こちらでも寄稿した原稿を再掲します。
岡山から上京し、下見で訪れたその日、私は東京女子大学のキャンパスの美しさに見とれ、そこに宿るサムシングに心を奪われました。卒業し、40年余りを経て同窓会の理事としてあらためて本学を訪れていますが、ゆるぎなくそびえる白い塔や広々とした芝生、そして本館のラテン語(凡そ真なること)を仰ぎ見て、豊かな環境で心ゆくまで学んだ日々のことをなつかしく思い出しています。
私は今、自分史活用推進協議会の代表理事として、自分史の普及に努めています。自分史という言葉は戦前には無く、1975年に歴史学者の色川大吉氏が『ある昭和史―自分史の試み』で、「庶民こそ自分史を語るべきである」と述べたことで市民権を得ました。自分史には過去を振り返り、自分を見つめることで自分らしさを発見し、自分のことをよく知ってもらえるようになるという魅力があります。私は長年、編集者としてのキャリアを積んできましたが、社会的に定年とされる60歳の頃にこの魅力に気づき、さまざまな世代に「自分史で自分を見つめなおしてみませんか」「自分らしさを発見しませんか」とお話ししています。
人は未来のことを知りたいと思うものです。けれども、その答えは未来にはありません。答えは過去の出来事の中にあります。自分がこれまでに出会ってきた人や出来事を再吟味し、点と点でつなぎ、今の視点でとらえ直すことで、これからの自分がどうありたいのかということも見えてきます。
私が自信をもってこのように語りかけることができるのも、大学時代に史学科で学んだおかげです。E・H・カーの「歴史とは現在と過去の対話である」という言葉に出会って史学科に進み、大口勇次郎先生から近世史を、羽下徳彦先生から中世史を学び、歴史の読み取り方と奥深さを教えていただいたことが支えになっています。
東京女子大学は勉学とともに体育も大切にしていますが、その学びの中で、私はもう一つ得難い体験をしました。競技ダンス部に所属し、東京大学のパートナー校として東京六大学戦や全日本戦などの学生選手権に出場し、上位で競い合いました。何が幸いするかわかりません。リクルートの創業者の江副さんが大のダンス好きでした。筆記試験と1次面接を経て、緊張して臨んだ役員面接でしたが、私が卒論のテーマに選んだ「後白河院とその時代」へのお尋ねとダンスの話で盛り上がり、めでたく採用となりました。リクルートが大卒女子採用に乗り出した最初の年であり、多くの応募者から選ばれたことに身の引き締まる思いがしたものです。その後、リクルートで私は出版部課長と広報誌『月刊リクルート』の編集長を務め、独立後も長きにわたってリクルートグループの広報誌の編集の仕事をしました。
その時その時を懸命に生き、学ぶことが、新しい出会いにつながります。どうぞ自分の選択を信じ、仲間との出会いを大切にして存分に学生生活をお楽しみください。その一つ一つが「あなたらしさ」であり、未来への答えになると信じて。